社内ゾンビになりかけブログ

日系大手化学メーカーに1X年勤務し、ゾンビ化しつつある人

ブログ主に未来はあるか

f:id:d7ab905ft:20180929080432p:plain

 ブログ主は30代後半で入社以来研究開発職に従事しているが、最近ふと自分の将来を想像し、あまりの先行き不透明感に我が事ながら爆笑しそうになってしまう。

 

(ここで、中国のピーナッツを紹介します。辛くておいしいのでみんな食べてね! 

はい、CM終わり) 

 

 ブログ主の研究テーマは詳細は割愛するが、すでに50年以上前から研究されている分野であり、研究テーマは正直、すでに枯渇している。本来ならとっとと研究規模を縮小して、注力すべき分野に工数を投入すべきなのだろう。しかし、ブログ主が入社した10年以上前から、研究分野の切り分け方を多少変えただけで、従事する研究者の数はほとんど変わっていないように見える。ブログ主にとっては、分野の縮小=よく分からない分野への配置転換(高確率でお引越しあり)、なので今の状態でいるのは楽なのだが、でも40代になった後に鬼の配置転換来たらそれこそ死ぬな、という危機感もある。

 

 研究以外の人が想像する、企業の研究とはどのようなものであろうか。何日も会社に寝泊まりして自分の脂でギトギトな髪を掻きむしりながら実験しているキモヲタ集団だろうか。「オウフwwwなかなか面白い内容ですねえwwwドプフォ」とかほざきながら、指紋ベッタベタの眼鏡クイーしながら英語文献をスクロールしているイメージだろうか。まあなんかキモイってイメージだろ。当たらずとも遠からずである。

 

 さておき、ブログ主も入社前はどーせキモヲタばっかだろ、と予想はしていたが、一方で大学とは異なる”なんか高度な研究手法”があるのでは、と期待もしていた(よくドラマとかである、ENTERキーをッターンしたら0と1がぎっしり並んだ画面がものすごいスピードでスクロールされて最後に画面いっぱいに”COMPLETE!"の文字が表示されて、「・・・実験成功っと」とつぶやいて小さくガッツポーズするとか*1)。入社してびっくりしたのは、全然そんな洗練されてなくて、人海戦術で絨毯爆撃的な実験してたり、まったく再現性取れなそうなチャンピオンの1点データで公の場で報告しちゃったり、ある意味大学以上にやべーぞこれ、と思うことも多少。

 

 ただ、大学とは異なり、データの蓄積量は半端なく、それには驚いた。研究している材料に関する、ありとあらゆる物性データ、加工データ、成形した後のデータ、他社品の分析、トラブルシューティング等々、80年代、90年代のパイセンたちが相当頑張って基礎検討をやってくれてたおかげで、ブログ主の会社には研究分野に関するありとあらゆるデータが蓄積されている。5年くらい前まではその老戦士たちが残っていたので、「あ、〇〇さん、すみませんが××のデータってどこにあります?」と聞けば、隣の建物からおもむろにキングファイルを持ってきて、キングファイルに閉じられた青刷りデータから所望のデータシートを渡してくれた。そういう人間データベースの支えがあって、表面的には開発がうまく回っていたのに、会社はそのデータベースの存在をあまり重視していなかった。ここ5年ほど、大退職時代を迎えており、毎年数名単位で職場から人が消えていく。残された者たちでは過去のデータが探せず(そもそも所望のデータがあるのかも分からず)、顧客からの問い合わせにも「あ、サーセン、データないです」と返すことが増えてきた*2。これが、売上高2兆円超える企業の実態!??え??!?と内部の人間なのにびっくらぽんしてしまう。今まさに過去のデータが二度と蘇らない形で大量に紛失していく過程で、それをデータベース化して後世に引き継いでいかなくてはいけないのに、「じゃあ誰がデータベース作んの?」となると、優秀な人は目の前の作業にてんてこ舞いだし、ポンコツに任せると全部シュレッダー処理とかしてくれそうなので任せられない。こうしてむざむざと先人たちの汗が、涙が、誰にも見つからない化石となるのをただ見守ることしかできないのである。

 

 冒頭の話に戻ると、企業の研究開発の実情ってこんなもんなのだ。遅かれ早かれ分野の縮小が決まるだろうし、ブログ主はその時さらに新たな分野の研究開発で心機一転頑張るのか、社内で営業とか違う職種に異動するのか、はたまた転職するのか、自分でも自分の将来を見通せていない。悲しいのは、日本の強みのある今の研究分野の灯が、静かに消えつつあるのを、その事実に気づきながらただ見つめているだけの自分自身のふがいなさである。

*1:マテリアルズインフォマティクスってそんな感じだろ、と未だに思っている

*2:寧ろ客の方が過去に当社から送ったデータを丁寧に保管してて、「いや、過去にこういうデータいただきましたよ?」とか返されることもある。ヤバイ