社内ゾンビになりかけブログ

日系大手化学メーカーに1X年勤務し、ゾンビ化しつつある人

大手メーカーと鬼社員

f:id:d7ab905ft:20180917104033j:plain

 

 ブログ主は大手化学メーカーに1X年勤務する中堅社員である。それがブログ主の唯一のアイデンティである。そんなゾンビ社員の愚痴をうまいピーナッツでも食べながら聞いてほしい。 

  

 ブログ主は熱意をもって大手メーカーの研究所に入社したのだが、日々やってもやらなくても変わらないような報告書作りとパワポ作りに追われ、目新しい結果が出てもそれをモノにしようという意気込みに欠けた弛緩した雰囲気にいら立ち、一方で”水素水”レベルの耳障りだけいい中身スッカスカの研究にはなぜか予算がついたりする偉い人たちの研究審美眼の無さに心底呆れ、しかし、自分も気づけばその雰囲気を醸成する側に回りつつある、という矛盾を抱えながらなんとか毎日を生きている。

 

 ブログ主だけではない。研究所で3年も過ごせば、研究所を、そして恐らく会社全体を蝕む病理に気づくはずである。孤軍奮闘しながら状況を変えようともがく者もいるが、図体だけは馬鹿でかく、しかも、ゾンビ社員であふれた大企業が簡単に変わるはずはない。あるものは落胆し会社を去り、あるものは形ばかりの異動で問題から目をそらし、あるものは腐敗してゾンビ化していく。

 

 ゾンビ化しているのはブログ主のような管理職未満の社員ばかりではない。課長や部長の管理職社員も、他のゾンビ社員よりは立ち回りがうまかった、というだけで、新しいことはやりたくない、面倒なことを上に説明したくない、でもなんか耳障りのいいことをやったふりをしたい、という年季の入ったゾンビ社員なのだ。

 

 そんな中で、ゾンビ化せず熱意を失わない人間がごくまれにいる。ブログ主の観測範囲で最も高いエネルギーを放ち続けているのが、以前の記事に登場した鬼課長、である。この人は、若くして課長になったのち速やかに部長に昇進し、その後全く別の分野の研究所へ異動になりもはやここまでかと思ったが*1、そこでも金棒を振り回しながら強烈に研究を推進し、晴れてブログ主の研究所の所長として凱旋帰国を果たしたむちゃくちゃな経歴の人間である。顔も昔話に出てくるステレオタイプな鬼そのもので、身長は180超え、50代後半のくせにやけに筋肉質で、天然の赤ら顔にもじゃもじゃの白髪、という子供が見たら泣き出しかねない外見の持ち主である。

 

 この現・鬼所長は、プロジェクトの場ではブログ主などのメンバーをコテンパンにぶっ殺す一方、後から電話やメールを送ってきて、「あんたの発表な、よかったよ」と手のひら返しをしてきたり、こっちも憎むに憎めないなんとも複雑な感情を与える人間であった。未だに自分がこの鬼に対してどのような感情を抱いているのか、言葉では説明できない。ちなみにこの鬼は妻と2人の息子があり、会社の祭りかなんかで研究所の先輩がまだ小さかった鬼の息子たちと会った時に「お父さんってどんな人?」と聞いたところ、一点の曇りなき眼で「尊敬する人!」と答えたそうだ。家族仲は非常に良好らしい*2

 

 鬼は課長だったころから、決してネガティブな様子を部下には見せなかった。新しいことも大好きで、なんか興味深いことをやっているチームがあれば、部署を超えて「それ、もっと研究しようよ!」と言って口を出していき、強引に自分の部署の研究に引っ張っていく人間であった。正直、他のゾンビ課長やゾンビ部長からは疎まれていたように思うが、その名は本社まで轟き、若手(当時)のエースとして本社の偉い人たちからも目をかけられていた。

 

 鬼は怒る時には顔色が灰色に変わり、机をバンバンぶっ叩きながら怒号を浴びせるため、メンタルを病む社員、PTSDになって鬼を目の当たりにすると舌がもつれて話せなくなる社員など、ユニークな病み系社員を量産していった。なお、一度メンタルをおかしくした社員は、すぐに別の部署に異動させるなどのケアも怠らず、自己保身力にも長けていたため、今の職位(所長)にまで上り詰めた。頭の回転も恐ろしく早く、一方でボケ老人かと思うほど直近の結果を忘却したりする、マジで意味が分からなかった。

 

 ブログ主は3年ほどこの鬼の下で研究を行った。毎日が気が抜けなかった。電話一本で別室に呼び出され、説明をしている最中に上から被せるように、「お?あ?なんやそれ?なあああああああ!!!!!!」といきなり襲い掛かってくる鬼と日々戦っていた。毎日が緊張の連続だった。家では悪夢にうなされ*3、当時新婚だった家人がおびえていた。

 

 しかし、当時のブログ主は一切、ゾンビ化はしていなかった。テーマに関係ないことでも*4、おもしろい結果が出ると、鬼がそれを強引に別部署や事業部などに言いふらし、怒涛の駆動力で開発ステージを強引に上げていくのであった。日々、がむしゃらに走り続けていた。この時のブログ主は、自分の開発がどんどん進んでいくことに妙な高揚感を感じ、恍惚としていた。自分を振り返る余裕すらなかった。研究を進ませているのは自分ではない、ということに気づくべくもなかった。

*1:一説によると、この別研究所への異動は、会社が鬼課長に与えた試練であったそうである

*2:鬼の年賀状は毎年家族写真なのだが、息子2人が年々父親クリソツになってきている

*3:やるべき実験をやっていなかった夢、他部署との調整を怠った夢はマジで何度も見た

*4:当時は主たるテーマに8割程度の力を注げば、2割程度は自分で好きなテーマを設定し、研究してもよいというどこかの受け売りのような制度があった